当会会員の関口博之さんから、見学会の報告が届きました。
参加された見学会は、当会始めての試みだった市民参加型の見学会です。
5月25日(日)市川市民参加型見学会
参加市民;17人
伝統木構造の会会員;16
緑の家会員;14人
講師・職人・関係者;15人 合計62人
そして
施主;行徳の御夫妻と保育園園長
この会にはスゴイ仕事をされている職人さんがたくさんいます。
ですから、見学会の当日が大雨で靴下まで濡れてしまっても、そんなことより、
帰るころにはさまざまな刺激であたまが一杯になっているのです。
住宅街の中、関わった人たちに命を与えられたかのように建っている「行徳の家」。
こういう家で暮らしていきたいと願っていた施主夫婦は、
散歩の途中偶然に工事中の家を見たのをキッカケに、ご自身の夢を実現することになりました。
その工事をしていたのは、地元で世代を超えて住み続けられる家をつくっている「大屋工務店」。
住宅を印象づける屋根はよわい「むくり」と軒先の一文字葺きのシャープなライン。
雨樋も両端を高くしていて、縦樋は中心にあるので家の隅はスッキリとして見えます。
外壁は、左官屋さんが九十九里まで行って探して来たという、
角がとれた貝殻を混ぜ込んだ暖かみのある左官壁。
一番大切な木組みは、居間の上を一部吹抜けにし、地元山武杉を太鼓に挽いた大きな
梁で屋根を支えます。
建具も山武杉を使い丁寧に造り込まれ、各部屋毎に仕上を変えた漆喰塗りの壁。
階段手すり等には細身の北山杉を用い、幅木や見切材にまでこだわりの細工がほどこされています。
これでは見学時間も予定をついオーバーするというもの。
施主の希望した「木の香りがする純和風の日本家屋」は大屋棟梁をはじめ全ての職人により実現され、
すでに新しい暮らしがはじまっています。
「行徳の家」を後にする頃には雨も上がり、午後は増田会長の提唱する”新伝統構法”で建てられた
市川市の「風の谷保育園」へ向かいました。
この建物は園長である川副氏の願いである”「自然の力」を最も感じ取れる乳幼児期の子供達に
できるだけ「自然の中で生活できる環境」を提供すること”に向けて設計者の芝氏を
はじめたくさんのプロフェッショナルが力を合わせたたまものであります。
構造的な見所としてスパン10mを飛ぶ間伐材を使ったアーチが、ホールを中心として両翼
に並ぶ様は、従来の伝統構法のイメージを打ち破る印象で、まさに会長の言われる「ナツメロやって
るんじゃないんだヨ」であります。
柱を無くし、アーチで屋根を支えるという開放感。無垢の木でつくられた暖かさと安心感。
間伐材にノコを入れ、割いて、曲げてダボで固定したアーチはとても華奢に見えますが、
上棟の時上の方は揺れますか、と会長に聞きましたら「揺れない」と。
実際に見ることで、大きな材を使わずにこのような建築を造ることができることを体感できました。
ありがとうございました。