伝木 16号(平成21年1月31日発行)

 

■ 秋季(鶴岡)セミナー報告・田中美喜子
■ 鶴岡セミナーを終えて・剱持大輔
■ E-ディフェンスの実験
  伝統構法は壊れなかった・木内修
■ フォーラム「このままでは伝統構法の家が
  つくれない!」・日野明美
■ 構法寸感五・増田一眞
■ 地域だより・旧牧田家住宅保存の修理工事完成・倉恒俊一
■ 地域だより・越後にいきる家・村尾欣一
■ 左官職人 新保正一郎さんに聞く 三
■ 左官職人 新保正一郎さんにの仕事 二
■ 木製建具のディテール ・松本昌義
■ 総務便り八/役立つ「伝木」事情・井上説子
■ コラム・家屋と木霊・稲 貴夫
■ 題字写真の説明/伝木季報/編集後記

(左)大正四年に建てられた旧国立天文台官舎の桁に挿入された火打ち貫

(中)体育館に展示された模型

(右)直井光男棟梁による槍鉋の実演

大正四年に建てられた旧国立天文台官舎の桁に挿入された火打ち貫
体育館に展示された模型
直井光男棟梁による槍鉋の実演

 

 

 

 

 

木造でRCを渡橋した話
(増田一眞「構法寸感5」より
私の家の近くに鉄筋コンクリート三階建ての幼稚園がある。ところが、必要耐震強度の六〇パーセントしかない、という診断結果を貰っているというので、行ってみれば、細い柱を細かく建てた、木造に近い建て方だった。階段室の壁もブロック造であるから、ほとんど純ラーメンに近い。園長先生が心配して「耐震補強を考えてくれないか」と言う。最初、鉄骨補強案で見積をとったら千数百万円かかるとういうことだった。
園としては、そんな費用は出せない、という話なので、ならばとなって、木造補強案を考え市役所に補助金を出すように相談に行ったところ、担当者は剣もホロロで、そんな基準はどこにもない、と言って取り合わない。曲げ系のRC造は軸力系の木造でならば充分補強可能なのだ、といっても、聞く耳をもたず、なんて非常識な奴だと言わんばかりな顔をしてこちらを見ている。こちらも相手を何て本質を見抜けぬ奴だと軽蔑して見る、というニラメッコをして物別れと相成った。ところが何日か後に、船舶振興会(競艇で有名な笹川会長)に申請すれば、七〇パーセント位補助金が出ると聞いたので、急いで計算書を添付して申請したら補助金がついた。早速、市川の伝統構法の名棟梁、大屋好成氏に頼んで刻んでもらった。その結果が写真のような出来栄えであり、その詳細は図に示した通りである。

 伝木 16号 写真