伝統木構造の会 会長 増田一眞
伝統木構造の会は、我国の伝統木構法を継承し、さらに発展させるための、職人と設計者、山林業や材木業、地場産業、そして伝統建築文化を愛する全ての人々の会です。木造でなく木構造としたのは、構造の面から伝統否定が為されているからです。耐力の証明を、数字できちんと示さないと伝統木造は実現できません。
数千年の歴史をかけて歴代の棟梁たちが創造したすばらしい精神と作品、民家や社寺にみられる端正な優美さと自然さ、融通無碍ともいうべき自在性、伝統技法に凝縮する合理的核心、これらを全て受け継ぎ発展させこそすれ、決して衰退させてはなりません。伝統木構法を我々の代で絶やしてしまうのか、それとも継承し、発展させ、創造し続けるのか、が今問われているのです。
祖先たちの残してくれたすばらしい遺産を捨て去ることは歴史的な犯罪であり、同時に、世界に対する日本人の義務を放棄する事でもあります。
古き良き技法の伝承と発展の道は障害が多く、地道な努力を強いられる苦しい道ですが、然し又、日本民族の文化の精髄を明日に伝える誇りを伴うみのり豊かな道でもあります。建築文化創造の主役たる職人と協力して、伝統木構法を科学に迄高め、良くない仕様を全て追放するために、多くの人の知恵と力とを伝統木構造の会に寄せて下さることを、心から訴えます。